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【産業動向】TSMCのGaN撤退、BYDに痛手の見方 DIGITIMESレポート
2025-07-14 11:58:54
調査会社DIGITIMES Researchは2025年7月11日付レポートで、台湾TSMC(台積電)が2027年7月までにGaN(窒化ガリウム)ファウンドリ事業から撤退すると決めたことで、最も痛手を受けるのは中国の電気自動車(EV)大手BYD(比亜迪)だとの見方が台湾の半導体業界に広がっていると伝えた。


レポートでDIGITIMESは、TSMCのGaNファウンドリ事業で企業が受ける影響について、パワーコンポーネント大手の米Navitasは、今後1〜2年かけて生産業務をTSMCから台湾PSMC(力積電)に移管するため、大きな影響は出ないとみられると指摘。一方で、BYDについては、TSMCのGaN顧客トップ3の1社だとし、高電圧GaNモジュールの安定供給と品質・技術流出リスク管理のため、BYDは早急に代替ファウンドリを確保する必要があるとした。また、GaNはEVや充電スタンドで高い信頼性が求められるため、受託製造先の技術成熟度と特許リスクが重視されるとした。

DIGITIMESの伝えた台湾の半導体業界筋は、TSMCに対する中国系からのGaNの注文が2025年以降、急増していたとし、結果的にこれが、TSMCが撤退を決断した理由だと指摘。中国系からの注文増で、利益率が下落傾向にあった他、中国市場における過激な価格競争に巻き込まれるリスクに直面したTSMCが「損切り」を選択した形で、中国EV市場での熾烈な競争がGaN産業にも波及したものだと述べた。

一方、BYDが価格競争力の高いInnoscience(英諾賽科)をはじめとする中国系GaNサプライヤーではなく、TSMCに委託していた背景について業界筋は、Innoscience等の経営主体がIDM(垂直統合型)だったことが関係していると指摘。BYDをはじめとする中国系企業は、技術流出の懸念から、製造と設計を分離し、かつ中立性が高いTSMCのようなファウンドリを選ぶ傾向があるとの見方を示した。

DIGITIMESは、BYDがTSMCにGaN製造を委託していたのは、主に高圧製品で、EVや充電スタンド等、高い信頼性を求められる分野で使用するものだと指摘。BYDはSiC(炭化ケイ素)製品も展開しているが、同社にとってGaNが依然、有効な選択肢であることは、高圧用途をTSMCに発注していたことからも読み取れるとし、こうした中、中国系GaNメーカーはなお、品質面や技術力で改善の余地を残していると評した。

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